母さん……

私のあの帽子、どうしたんでしょうね？
ええ、先日の19日、蓼科山7合目登山口から山頂までの間で
気づいたらなくなっていた、あのゴアテックスの帽子ですよ。

母さん、あれは買ったばかりの帽子でしたよ。
私はあの時、随分悔しかった。
だけど、登っている途中、頭が暑くて仕方なかったから………

西条八十 風.。

だって、暑くてかぶってられなかったんだもん。
脱いだ帽子をザックのポケットに仕舞う時に、フッと「失くすかもしれない」と思ったんだよね。思ったんなら失くさないように、しっかりと仕舞えば良かったものを、そのままサイドポケットにグイグイ押し込んで終わりにしたのがいけなかった。
おかげで途中のモンベルショップで新しい帽子を調達する羽目になった。
旅の初日から帽子無しは心もとなかったから。

あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

この一節は、そのまま「帽子」から。
私の帽子がキリギリスの風よけになっていたら、それはとても嬉しいことだ。