ある秋の夜の話
2004年の今頃のこと。
私は遅い遅い夏休みを取って北海道旅行に出た。
この時はホッカイダーネオとふたり、道央の旅だった。たくさん感動する景色に出会えたけど、中でも最も感動したのは然別湖。宿泊した夜、ネイチャーガイドを頼んで湖畔に星空を観に行ったのだった。
その夜は満月だった。
明る過ぎる月は、満点の星空を消してしまうほどのパワーがあった。
その代わり湖面からわき上がる気荒らし(けあらし)や、遠くではねた魚が残す水の輪まで照らし出してくれた。秋というには冷え込みすぎる気温のなか、ネイチャーガイドが用意してくれたあたたかいココアを飲みながら然別湖と森の説明を聞き、更けて行く夜と秋の空気を満喫した。
ガイドの説明によれば、然別湖のある大雪山国立公園は日本で最も広く暗い夜が訪れる場所だと言う。衛星から日本を見ると、国の形に真っ白く蛍光灯色に輝いて見えるそうだ。その中で黒く点のように見えるのが大雪山国立公園。看板や建物も厳重に規制されているため、この広いエリアは漆黒の闇が保たれていると説明していた。
時間になり、湖畔から引き上げ送迎のクルマに戻る。満月で出発前にネットで読んでいた『鈴の音が聞こえてきそうな星空』に会えなかったのは残念と思いながら林の中を歩く途中、ネイチャーガイドが私たちに「ここは木立の間で暗いから星がよく見えますね」と言った。
同時に私とネオは夜空を見上げた。
ウソみたいな星空が頭上に在り、一筋、星が流れたのだった。
それはドラマみたいな一瞬だった。私とネオが同時に声を上げた。
ネイチャーガイドは見逃した。
あれほど月が明るかった夜なのに、あれだけの星を見た夜はあの時が最初で最後だった。しかも、神様の指からすり抜けたような流れ星のおまけ付きだった。
今度の日曜の夜は朔の夜、新月だ。
私が山で過ごすのは前夜だが、暗い空が星をたくさん見せてくれるかもしれないと、小さな期待を持っている。
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