天障院篤姫
低気圧に負けるのか……雨かね、火曜水曜……わ〜ん。
なんか、去年に引き続き、夏休み前は天気のことばかり話している気がする。(気になる人は去年の9月の過去ブログを読んでみてね。ある意味激動でしたし。)
で、前回眠くてやめた「天障院篤姫」(宮尾登美子著・上/下)ですけど、面白い本です。天障院篤姫といえば、皇女和宮が御降嫁した時の姑で、和宮をいじめ抜いたとドラマ(例えば、フジの一番最初の『大奥』ね)で描かれることが多いけど、この本ではそうは描かれていません。藩主・斉彬の画策によって徳川に嫁に出され、篤姫本人も斉彬に利用されているのを気づかないまま、将軍継嗣争いに巻き込まれていく…運命に翻弄されながらも気高く生きた女性を描いています。もちろん和宮との嫁姑争いにも似た関係も描かれていますし、現代では考えられないほどの「家」という重みも描いているため、時折違和感も覚えますが、この「理解できないほどの家という存在」が彼女を縛り、また支えもしたのじゃないかなとも読み取れるのです。最後まで読み応えがあり、だれることがありません。私が特に印象を強く持ったのは、篤姫が徳川に輿入れする前から教育係として仕えた年配の女性(名前を失念しました)の存在です。その容姿の形容も凄くて、読んでいるといかつい形相のおばちゃんが想像されるんですけど、彼女の教育係としての信念がものすごいのです。初めまだうら若い篤姫はこの強烈なおばちゃん教育係に反発し、自分の持つ扇をおばちゃんの額めがけて投げつけたりもするんですよ。しかし、そうしてぶつかり合ううちに、どんなにこのおばちゃんが自分を大切にしているのか、信念を持ってぶつかってくれているのかを理解し、かけがえのない存在になっていくのです。
愛のない結婚、政治、権力争い、明治維新という時代のうねり、江戸城開城……信じられないほどの数々の苦難を乗り越えて行く篤姫。愛だの恋だの、寂しいだの、いつまでも女性としてみて欲しいだの……今の女性は忙しくて大変だなあと他人事のように思っていた女性の端くれの私ですが、この小説読んで「現代女性のなんて甘っちょろいこと……」と思い、「生きる神髄を見据えることのできる女って素晴らしい!」と思いました。この『強烈おばちゃん教育係』の他にも和宮など魅力的な女性が描かれ、そして政治の世界を仕切る男性が描かれている「最後まで引き込まれる時代小説」です。これからの秋の夜長、是非興味がある方はトライしてみてね。
そういえば、唯一残された天障院篤姫の肖像画があるらしいけど、どこに展示してるのかなあ……あ〜また読みたくなってきた。
![]() | 新装版 天璋院篤姫(上) (講談社文庫 (み9-7)) 宮尾 登美子 by G-Tools |
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 沈黙(2016.12.27)
- 金欠なのに新刊買ってしまった。(2012.11.17)
- ネットって凄いな。そして人生いろいろだよな。(2012.08.26)
- 日本じゃイブの日で終わってる気がするんだが(2011.12.25)
- 外来と上咽頭炎について(2011.10.21)
最近、宮尾登美子さんの作品読みふけってます。
篤姫はドラマのイメージもあってまだ読んでませんが、無性に読みたくなりました。宮尾さんの作品は生々しいほどの描写があって篤姫はどう描かれているのやら??って期待もあります。
投稿: み | 2008年9月28日 (日) 21時54分
>み さん、はじめまして。
コメント、本当にありがとうございます。
この記事は2年も前に上げたのに、篤姫人気もあり本当にアクセスが多いのですが、どなたもコメントしてくれる方がいないので、誰が最初コメントして頂けるのかしら? と楽しみにしておりました。
宮尾さんの作品で「蔵」と「天璋院篤姫」は入院中に読みまして、逆境や人生における障壁を苦しみながらも力強く超えて行く女性主人公の姿に力づけられました。
骨太のどっしりした作品が多いのも宮尾さんの作品の特徴ですよね。
「天璋院篤姫」も是非機会があったらお読みになってみてください。大河ドラマも面白いけど、小説は別物として考えた方がいいかもしれません。本当の篤姫の人生は、小説よりももっと激動だったのでしょう。
よろしければ、こちらのブログにもまた遊びにいらしてくださいね。
投稿: 更紗 | 2008年9月29日 (月) 12時48分