久世光彦さん
好きな作家をあげるとすると、そのうちの一人は向田邦子さん。
その向田さんと親交があり、向田作品をドラマ化していた演出家・作家の久世光彦さんが亡くなった。
久世さんともライター時代に取材でお会いしたことがあった。場所は久世さんの仕事場である事務所。当時久世さんはドゥ・マゴ文学賞を受賞された直後で、その作品や死生観などのお話をうかがった。大変に気さくな人柄で、お話の途中で私の顔を見て、「君みたいな顔が好きだ」と言ってくださり、田中裕子さんの系統の顔だともおっしゃって、私が嬉しいのを押し隠していると、久世さんは「人をホッとさせる顔だよ!地味なんだけど」と付け加え豪快に笑っていました。喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら…。
私も久世さんが演出された向田さんのドラマをお正月に観るのが当時大好きで、そのことを話すと、「ちょっとおせちに飽きた頃に、ああいう日本のいい時代のドラマを観るのっていいでしょ」と嬉しそうにおっしゃっていました。
この取材を申し込む時に、御自宅に直接電話をしたのですが、そのときおそらく奥様と思われる方の、とてもきびきびと溌溂とした声が忘れられません。私がうっかり久世さんのお名前を「みつひこ」さんと読み間違えると、きっぱりと「てるひこです」と訂正され、それでも丁寧に「久世は今不在ですから、こちらからまた連絡致します」とおっしゃって取材の間を取り持っていただきました。
久世さんは御自宅で急に倒れられたとのこと。
どんなにか御家族のみなさんもショックを受けているのだろうと思うと胸が痛みます。なぜか少し前に、向田邦子さんの「あ・うん」を読み返したいなあ、などと思い、ドラマのワンシーンを思い出したりしていたので驚きとともに、あの独特の雰囲気のあるドラマがもう作られないかと思うと残念です。
久世さん、天国で向田さんと再会されましたか?
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