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2008年4月20日 (日)

無題

「人の命を奪おうとする発言を続けることにずっと苦しんでいる。だが、命をもって償うことが正しいと信じているし、社会が命の重さを考える機会であってほしい」

光市母子殺害事件の差し戻し控訴審判決が22日に言い渡される。
奥様とお子さんを亡くした本村洋さんが記者会見で語った言葉の中で、最も印象に残った言葉。

以前にもブログに書きましたが、この事件のニュースが報道されるたび、事件の悲惨さと本村さんの冷静さが鮮明になるように思います。
他人に奪われた妻と我が子の命。そして自分がその犯人の命を奪ってくれと願い発言する苦悩。当時18歳の少年が起こした事件は、じわじわと別の連鎖する苦しみを生み出し続けているのです。

当事者である被告人は今何を思うのでしょうか? 死刑か無期懲役か…生きるか死ぬか…その事だけを考えているのでしょうか? 自分が犯した罪が「あの日」だけの事だと思っていたとしたらそれは違うのだ、という事を本村さんの言葉が表しているのです。

自分が世間から死を望まれる事を犯したのだと理解していたとしたら、生きていたいと思えるのでしょうか?
今の私が考えられる範囲の答えなら「生きていられません」。生きて罪を償いたいなどとは言えません。死ぬしかない、殺して欲しいと願うと思うのです。
それでも「生きて罪を償いたい」と言うこと自体が理解できないのです。

そういう人間だからこういう事件を引き起こしたという事でしょうか。

妻と子を殺され、犯人の死刑を望み、またその事で自分を責め傷ついている……あの日から今日まで遺族の方は連鎖して起きる苦しみに耐え、自問自答し、それでも自分の良心に従って理性を持って発言をし続けている。このことを理解していたとして、被告人はこの先どうやって生きて罪を償おうというのでしょうか。
死刑について反対とか賛成とかそんな議論以前に、自分の欲望のままに殺人を犯した人間の罪の償いって一体何をするつもりなんだろうと理解できないのです。その先には『死んで罪を償う』という方法しかないように思うのです。

もし、本村さんが望んだ死刑が求刑されたとしても、本村さんの苦しみは軽くなる事はないでしょう。犯人がこの世からいなくなったとしても同じでしょう。その度ごとにきっと本村さんは自分の行って来た事や望んできた事を振り返り、心を乱すのでしょう。

人間の意識の中に誰でも多かれ少なかれ持つ悪意。
その悪意に冷静に臨むか、悪意に支配されことにも気づかないのか……この事件が報道されると真っ暗な古井戸の底を眺めている気分になるのです。

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コメント

おはようございます、宇助坊です。
更紗さんのおっしゃるとおり、全く同感です。
今まで、被告人の言動に憤りを感じてきましたが、これで被害者のご遺族をはじめ、多くの世論が望む判決が出ても、ご遺族の「苦しみの連鎖」が終わることはないんですよね。
…この事件では、実に多くのことを考えさせられました。

更紗ちゃん、こんにちは。
この事件、報道される度に
腹立たしい思いや、切ない思いや、悲しい思いや
色々な気持が渦巻きます。
私は基本的に、死刑制度には反対なんだけど
この被告人だけは許せない気がします。
この人だけは「生の中での償い」は不可能だと
思えてならないのよね。
ご主人が自分自身の思いや発言に苦しみながらも
尚も極刑を訴え続けてきたこの数年間が
少しでも報われればいいのになと思っています。
なんだか文章にするとすごく簡単になってしまう・・・

>宇助坊さん、こんばんは。
ここ数年は、気分の悪くなるような嫌な事件がたくさんおきていますが、この事件はその中でも最も衝撃的な事件だと思います。

永山事件など同じように10代の青年が起こす凶悪事件は昔からあり、その度に社会では議論が繰り返される訳ですが、結局は答えがでないまま、また同じような事件が発生するのです。永山事件の場合、永山則夫自身は獄中で贖罪の境地に至ったと言われています。その事自体が被害者の救いになるのか、それとも憎しみに直結するのかも私にはわかりません。
ただ、永山則夫の死刑が執行されたあと、遺族はその遺骨の引き取りを拒否したそうです。
うまく言えないのですが、たぶん罪を犯すという事は、そういう事なんだと思います。「それ」を成し遂げたとしても、生み出されるのは不幸と憎しみだけで、しかもそれは広がり染み込み続けて行くという事なのでしょう。

本当に悲しいです。

>kanaちゃん、こんばんは。

深いテーマであればあるほど、文字にするは難しい。

本村さんにとって、たぶん、「あの日」以前のように笑える日など来ないのかもしれません。
でも、きっと亡くなった奥様もお子さんも、そんな本村さんを望んでなどいないでしょう。本村さんにこそ、これから先、世界中で一番幸せになってもらいたいと天国で思っているに決まっています。
そして、その事を一番感じているのも本村さん自身なんでしょうね。だからこそ、本村さんは「あの日」からずっと続いているつらくて難しい事柄にも、ああして冷静にしていられるのだと思います。
愛にはいろいろな形があるものだと思うのです。

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